『記憶の森』(原題『The Forest of Memory』) ■ストーリー 自然に囲まれた静かで美しい土地で心優しい大人達の愛に包まれ、レネは孤児院の仲間達とすこやかに育っていく。ただ、レネだけでなく孤児院の子供達全員が、奇妙な違和感を感じていたのは孤児院裏に広がる広大な森の存在。孤児院の長であるシスター・カフィはその森を『帰らずの森』と呼び、子供達がその森へ入ることを厳しく禁じていた。『帰らずの森』は一歩でも足を踏み入れると、二度と戻ってくることができなくなる恐ろしい森なのだと。ある日、ロデル、ベンジャミン、カートの三人の少年は好奇心から、真夜中に孤児院を抜け出し、『帰らずの森』へと向かう。 翌日、三人がいなくなっていることに気付いた子供達は大騒ぎでシスター・カフィのもとへと駆け寄るが、 カフィは「彼等は過ちを犯しました。もう二度と戻ってきません。彼等のことは忘れなさい!」 と冷たく言い放つ。そのあまりにも高圧的な態度と厳しい言葉、そして今までに見た事のないカフィの残酷な目に子供達は何も言い返せず、ただただ困惑するばかり。三人の少年が森に消えたという事実は孤児院のタブーとなり、やがて、子供達の記憶から次第に薄れ、誰もその話をする者はいなくなり、果たしてそれが真実だったのか?、ロデル、ベンジャミン、カートという名の子供達は、実は存在していなかったのではないか?と曖昧な記憶を子供達に残したまま季節は流れる。 時を経て、十九歳で孤児院を出ることになったレネは、 「孤児院を出る前に、あなたに大切な話がある。」とシスター・カフィの導きにより、 『帰らずの森』へと向かうことになる。『帰らずの森』へ恐る恐る足を踏み入れるレネ。 レネはそこで今までに見たことのない異様な光景を目にする 。 森の奥深くに広がる平原に炎を巻き上げながらぽつんと立つ一軒の小屋。 錆び付いた橋の欄干に立つ異様な生き物。 遠い海の色をした真っ青な木。 何処か見覚えのある少年と幼い頃の自分がぼんやりと佇んでいる木陰。 歳をとらずに失踪した時のままのロデル、ベンジャミン、カートの姿…。 カフィによると、それらはレネの記憶の奥底に眠る、心のなかの風景なのだと言う。 その言葉が信じられず動揺するレネに、カフィはさらに驚くべき事実を告げる。 「あなたの両親は実は火事で死んだのではなく、ある事件に巻き込まれ死んだ。あなた自身もその時にすでに死んでいる。」のだと…。そして、「私に伝えられることはここまで。あなたが一体何者で、なぜこの森にいるのかを知りたければ、あとは自分自身で進みなさい。」という言葉だけを残し、カフィはもと来た道を戻りはじめる。ゆっくりと足を踏み出すたび、彼女の体は徐々に透明度を増し、最後には森と同化したように忽然と姿を消す。カフィの衝撃的な言葉、突然の消失、異様な森の状態に戸惑いつつ、レネは意を決し、 『帰らずの森』とは何なのか?、自分自身は一体何者なのか?という答えを導き出すために、さらに森の奥深くへと進んでいくのだった…。
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