プリスカプトリシカ


家の前にある沼に沈んだ弟は今日も帰ってこない

家の台所では、

青い棘を煮詰めたプリスカプトリシカという料理を妹がおいしそうに食べている

空へと続く階段を登り続けた父はもうすぐ定年退職

けっきょく

空の果てには行けずじまいだったけれど

深い

深い

粉まみれになって

雪の粒をさらう母の遠い目

相変わらず無言で父の羽にアイロンをかけている

観覧車で数年暮らしている兄から絵ハガキが届いて

家族みんなで読んだけれど

チョコレイトで書かれた文字は、

夏の熱に溶けて、ただぐねぐねと解読不能な暗号が踊っているだけだった

古い友人がバスタブで酒を飲み溺死

青白い指先から真珠のように美しい水滴がたれる

どんな涙が

そこに流れたのか僕は知るよしもない


君は見た?

あの青く美しい惑星の終わりを

今、世界はとても静かだ

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