次の扉


いつか終わる事を知っていて

私たちはその言葉に手をのばした

窓の向こうでは右腕のない男と、やけに唇の赤い痩せた女が

信号機の真下で言い争っている

金髪の女の金色の腕時計が太陽の光に反射してきらきら光る

信号機に止まった大きなカラスが男の耳たぶを食いちぎろうと狙っている

二人の背中に付いた汗のしみは大きく、

今にも、横断歩道に映る真っ黒な電信柱の影に飲み込まれそう 

嘘で終わらせようとして男と女は躍起になっている

言葉では補えない何かを、必死になって埋めあおうとしている

哀しみとか、絶望とか、

陳腐な言葉を重ねた打算と愛

人々は今日も正義を振りかざし、大事な事を忘れている

似た者同士の私たちは、誰がどうなっても、誰が何処かでのたれ死のうと関係ない

ただひたすら大きな空洞を掘り続ける

陳腐な言葉を重ねた打算と愛

それに少しの死をまぶせば世界は

どこまでも

どこまでも続いて行く 

どこまでも

どこまでも大きくなる

私たちの終わりは穴の空いたバケツ

時間だけが通り過ぎてゆく

時間だけが荒れた大地と欺瞞を優しくならしてゆく

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