開け放った窓


夏の
匂いの
終わりの
さきに
なにがあるのか
開け放った窓の
錆び付いた手すりに
染み付いた風

記憶ほど曖昧なものはないので
書きとめておくしかない
書きとめておいたとしても
それが真実なのかもわからない

名前も思い出せない
それはあなたの名前?
それともわたしの名前?

うつろう月の轍に
銀色の雲がかかる
夕刻に死んだはずの欲望が記憶を貪る
わたしたちは
いつだって
曖昧で
死について言葉を持たない





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