コヨーテ


真夜中のコヨーテ
月を見上げて
熱いコーヒーを
飲んでさようなら


白い手袋
冷たい雪の花
鎮静剤を射ってコヨーテ
歯車の狂った千鳥足


夕凪にコヨーテ
おおきな目玉で
ぐるり
あたりを見渡せば
見知らぬ街の
ひとりぼっちの歌うたい


蛇口ひねれば
込み上げる嗚咽、戯言、由無し事 
湿った鼻先触れる言葉の切っ先
満月に溺れるコヨーテ
うたかたの夜


星が踊り
虹が飛沫をあげた陽炎の残滓
幻灯機のさもしい幻に映るコヨーテ
深い慟哭の爪痕


コヨーテ
おまえの血肉に待ち望んだ刻の撃鉄
今ひとたび
永世変わらぬ記憶の罪におまえの一撃を


差し出した掌をすり抜けて 
喉元に喰らいつく鋭い牙
それは俺の躯の深奥を深く抉りとり
心が砕ける速度で弾けて消えた
 
back