川縁


「本当のところ言葉などいらないのだ。」



煙草は言って

春先の空にとんびのつがいのような孤を描いた

半ダースほどの眠気を川辺に沈ませて

電車は陸橋をこえる

記憶から徐々に消えてゆく道が短い冬の終わりを告げ

やがて

草むらに残された蛇の抜け殻とともに

静かに時は歯車をまわしはじめる




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