僕達は眠りにつく速度で起きなくてはならない

遠い夜明け朝日にけぶる時の雑草

僕達は叫びとけたたましいサイレンの響きとを混同して

全くの空白を造ってしまった

神はこの世の創造者たりえるか?なんて浮ついた言葉を

君は僕の腹に掌に握られたつぶてとともに投げつけてくるけれど

シゾフレニアと名付けられた兄の血は小さな痼りとなって

僕の躰に今日も降り注いでいるのだ


夏空の下に横たわった母の傷跡は剥落の切望を見事にさらけだし

ひび割れた台所の水溜に錆びた水の痕跡を所狭しと並べ立てる

逃すまいと

毎日は細胞を蝕み背丈を僅かばかりずつ取り上げて

そんななかで僕達は建設的な明日を見つけることに終始する

希望は失われゆく途中に存在し

世界を瓶の中に詰め込んでしまった僕達自身を

慰める拙い言葉の一つにすぎない

けれど

適度な傷口をつくりあげる運命の下

万華鏡のような感情の起伏を誇らしげに広告しながら

僕達は希望と言う字を胸に刻み込み

夜な夜な降り注ぐ病んだ荒廃を走り続けている

手は握られて

腐りかけたレモンティーを一息に飲み干す深淵を覗き

真実に隠蔽された欺瞞をさらけだす

「愛してる!」と誰かが叫んだまではよかったが

今朝、鈍い繊細さに愚弄された少年は17という数字で

確かに命を絶ってしまったのだ

何が悪いという理由も根拠もなく

「悲しい」という言葉によってしか語られない

悲しみの憐憫を引き継いで

当たり前のように時間は進んでゆくがそれでもなお僕達は

新しい場所を探し

新しい言葉を語り

新しい秘密にほくそ笑むことを欲している

死が意味した魂の価値を生への意味へと転換するのが

僕達の得意とするところでありいつもの常套手段

遠い夜明けを待っていても気付かないぐうたらな態度で

日々は僕達の頭ん中を駆け足で通り過ぎる

どうか真の繊細さを!

どうか僕達のから元気が真の元気を取り戻してくれますように!

愛と呼ばれる陳腐で偉大な言葉にせめて慰めの言葉でも捧げて・・・


馬鹿らしい

僕達に必要なのは魂の叫びだスキャットだ

猫の威嚇にも似た鋭いしわぶきでもって

吐き出される屈強なイメエジだメチエだ

人のカタチだ

心のあるべき姿だ!

願いではない

醜い傷口をさらけだす力強い意志だ!


深く吸い込むとこの場所は小さな雫に満たされる

朝方まで眠り続けた太陽はひどい頭痛に悩まされながらも

僕達の呼吸に暖かな日差しを投げかけ

奇妙にねじ曲がっ笑顔を僕達の口元に強制している

それが僕達のあるべき姿なのか?

疑問の余地を挟むまもなく

ニュースキャスターは記憶の剥落の模様を落ち着いた口調で喋り

今日、一日もまた平穏であることに安心しきった表情で

殺人事件の概要を抑揚のない声で説明している

皮肉な表情を浮べているのは僕達の心のわだかまりだけで

実際のところ

僕達の顔はポカンとした間の抜けた表情を

テレビに向かって晒しているだけなのだ


大雨のように爆弾が異国の街に降り注ぎ

はっきりとした炎の揺らめきがブラウン管の中に

オレンジ色の影を落とすとき

僕達は沈黙の行為でもって抵抗を企てようとする

けれどその行為にいったい何の意味がある?

時として沈黙は権力にも希望にもなりえるが

今、僕達の行っている沈黙は言葉を放棄した愚純な行為だ

叫ぶこと

笑うこと

泣くこと

喜ぶこと

怒ること

感情の起伏すべてでもって僕達は声をあげなければならないのだ

言葉を記さなければならないのだ

深い悲しみと怒りは幾つかの夜と朝の退屈な肉体を持て余し

何度迎えたかわからぬ屈辱の慟哭を飼いならしてしまった

絶えず吐き出される悲しみの渦に抗いながら

僕達は本当の意味での喪失感を知らなければいけない

胸の奥に自由への意味を響かせなければいけないんだ

今を唄う言葉に何の価値も見出せなかったとしても

でっぷり太った政治家の醜い躰に未来の僕達を見たとしても

僕達は叫び続けなければならない

声を荒げることなく感情を晒さなければならない

頬のゆるんだいけ好かない人相の目玉に映っているのは

花に無言を強制し続けた僕達自身なのだから!

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