砂漠


言葉の隙間を埋めるように雷鳴が轟く
この闇の中では三月の月が物静かに香る
昨日の絵空事を夜空に沈めてあなたは笑う

時々生きているのか
死んでいるのかわからなくなる
話したいことがあると言っていた男が
おとついの晩あっけなく交通事故で死んでしまった
だから
その男の話したかったことを私は永遠に知らないままだ

いったい何を
彼は
私に
伝えたかったのだろう?

雨でぬかるんだ砂漠に横たわり
漆黒の夜空を見上げながら私はぼんやりと微睡んでいる
(このままだと風邪をひいてしまうな・・・。)
頭の中の鈍い忠告はけっして睡魔には勝てない
死んだ男の声が記憶の底に薄らいでゆくように
私はゆっくりと眠りに落ちる
悲しみの淵からでようとすればするほど
夜におぼれてゆくように
あなたの声が遠ざかってゆく

伝えたいことがあったのは
本当は私のほうだったのかもしれない・・・
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