錆びた八月の扉


錆びた八月の扉

ひらかれることなく

夜を睨んだかげろうの声だけが

蝋燭の光に溶け込んで

蜘蛛の巣をきらきらと照らしている

答えも無く

するりと時の隙き間を駈け足で

通り過ぎる季節の残像

どれだけ大仰な言葉をならべても

一度死んだ心はもどらない

そよ風が生温い町の雑踏を一陣吹き抜けた






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