ウロボロスの魔女 / The Ouroboros Witch

2025年  31.0×30.9×6.0㎝・個人蔵

『ウロボロスの魔女』

世界は崩壊の瀬戸際にあった。時間の継ぎ目に裂け目が走り、
過去と未来が交錯しながら、現実の縫合はほどけていく。
魔女リドアは、その歪みを修復する唯一の術として、禁忌とされた「時の反転」の魔法に触れた。
それは、選択肢ではなく必然であり、彼女に許された最後の自由だった。

しかし、その代償は予兆のごとく訪れる。術式が発動した刹那、時間は一枚の環に折り畳まれ、
世界の裂け目は閉じたが、同時に彼女自身の存在もウロボロスの輪に封じられた。
そこは「始まりと終わりの境界」が欠落した領域。
あらゆる出来事は円環の内で繰り返され、記憶は自らを再生しながら、やがて意味を失っていく。

幾度もの脱出を試みるたび、時の羽根は宙を舞い、鮮血を散らし、
そして輪はより強く収縮し、彼女を原初の一点へと引き戻す。
時間は、鎖のようであり、迷宮のようでもあった。
やがて、記憶の端々に微かなひびが走り、リドアは自分が何を救おうとしたのかさえ忘れかける。

最後の試みに、彼女はすべての魔力を断ち切り、小さな呪物を輪へと投じた。
それは、彼女自身の存在をも否定する行為。
永遠の流れはその瞬間、崩壊し、新たな時の層がひらかれた。

だが、そこに彼女の名を呼ぶ声はなかった。
輪廻の残響だけが、夜風に紛れて漂い、知られざる郷愁の影となって、
この世界の片隅に沈んでいた。
そして、リドアの残滓は微かな光となり、やがて星々に混じり、誰かの夢の深みに落ちていった。
その夢を、彼女はもう二度と知ることはない。

ウロボロスの魔女 / The Ouroboros Witch 
2025年  31.0×30.9×6.0㎝・個人蔵

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[技法]
デジタルペイント、デジタルプリント、コラージュ、アッサンブラージュ、水性塗料、アクリル絵具、錆塗装、エイジング塗装、エイジング加工、樹脂造形、ジェスモナイト、ウレタンニス、木工

[素材]
真鍮、コルク、木の実、羽根、試験管、歯車、古書紙片、螺子、紐、鉄、アクリル板、紙、木材