
2025年 34.6×26.0×6.0㎝


『双星の魔女』
宇宙船の暗室に、一枚のセピア色の写真が漂う。
微重力に揺れながら、紙片は時間の匂いを滲ませ、記憶の底で脈打っている。
月を背にした初老の男。その背後には名を持たぬ双子の魔女が、音もなく因果を折り曲げていた。
彼女たちの髪は鉱物質の光を孕み、空間に亀裂を走らせ、その裂け目から時がこぼれ落ちる。
男の脳裏から、記憶が粒子となって剥がれ、魔女の黒曜石の瞳へ吸い込まれるたび、自己の輪郭は霞み、声は遠い残響へと変わる。
彼はもはや「誰か」ではなく、ただ崩壊の軌跡として漂っていた。
航行ログには謎の座標《X》が脈打ち、意味を剥奪された記号が、透明な重力の中を振動する。
それは終わりではなかった。存在は砕けながらも、なお世界の深部に染み込み、名を失ったまま、静かな光となって滲み出す。
男は軌道を失い、因果の迷路を無限に転落する。
すべての始まりと終わりが同時に折り畳まれ、世界はただ、一枚の写真として彼を呑み込んだ。
双星の魔女 / The Twin-Star Witches
2025年 34.6×26.0×6.0㎝
・魔女綺譚シリーズページ
[技法]
デジタルペイント、デジタルプリント、コラージュ、アッサンブラージュ、水性塗料、アクリル絵具、錆塗装、エイジング塗装、エイジング加工、樹脂造形、ウレタンニス、木工
[素材]
樹脂、アクリル板、紙、木材
